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英会話不要論

行方昭夫「英会話不要論」(文春新書)を読んだ。
著者は東大駒場で英語を教えていた先生である。
近年の英会話・コミュニケーションを偏重した英語教育に警鐘を鳴らし、そんな教育で日本人が英語が得意になるとは幻想であると訴え、旧来の英文法・英文読解をじっくり学ぶ英語教育に戻れと訴えている。
そりゃ、英語が読めなきゃ、英語を聞いて理解できるわけがないわ。
私は決して英語が得意というわけではないが、この著書の主張には共感した。

この著書によると、帰国子女は英語が得意というのはウソだそうである。
その例として、某帰国子女のA君を挙げている。
彼は帰国子女だから英語がペラペラ話せて、クラスメートもそんな彼を羨んでいた。
ところが、そんな彼の英語の試験の成績は悪く、不満に思った彼は先生に抗議した。
すると先生は、彼の答案をクラス全員に見せて、「私は」のIをiと小文字で書いたり、「3単現のs」をつけていなかったり、不規則動詞の過去形の綴りが間違っていることを指摘したそうである。
これじゃあ、英語が得意とはとても言えないわ。
そしてクラスメートも、英語ペラペラのA君を羨む気持ちが失せたとのこと。
(まあ、このA君は、英文法・英文読解などの勉強を謙虚にやり直したら、リスニングは得意だろうから、本当に英語が得意になるだろうが)

あと、著者は、本当の「バイリンガル」になるのは大変困難であると言い、ドナルド・キーンでさえも普通の日本人ならまずしないような日本語の間違いを犯してしまったことを挙げている。
詳しく言うと、キーン氏が翻訳した太宰治「斜陽」にはいくつもの誤訳があるとのこと。
日本語では主語を省略することが多いので、英訳するときには主語を補わなければならないのだが、文脈から主語を推定するところで間違ってしまっているのである。
主語を省略する日本と主語を必ず書く英語、これほど両者の間の壁は高いのである。

以上からわかるように、本当に英語が得意になるには地道な努力が必要であるが、そういう努力が疎んじられ、耳触りのよい論調が幅を利かせ易きに流れる傾向にあるのが、近年の英語教育である。
いや、これは英語に限った話ではなかろう。
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